プロフィール
・出身地:秋田県秋田市(旧雄和町)
・担当科目:EAP
・在職期間:2004年開学当初から現在進行形
雄和に生まれ育って、大学まではずっと秋田。大学4年生で休学しての交換留学が初海外。その後、ミネソタの大学院を卒業後、さまざまなご縁と最強の運に恵まれたおかげで、開学当初から現在までAIUで教員を務める。3人の息子と夫との5人家族。
Coming of Age Ceremony感
2023年4月に20期生が入学する国際教養大学。開学当初からずっとお世話になっている私にとっての20年目が、この4月から始まろうとしています。『成人年齢=20歳』の感覚がまだ強い私にとっては『Coming of Age Ceremony感』満載。これまで単純計算で一学年175人定員(開学当初は130人?)だとして、3,000人くらいの学生を迎え入れてきたと考えると多いような少ないような不思議な気持ち。全員を教えてきたわけでもない、育児休暇をいただいていた時期も3回ある、と考えると、実際にはその三分の一の1,000人くらいのAIU生とは『出会った』と言ってもいいのかな。実際にクラスで教えた人もいるし、クラブやサークルの顧問をしていて出会った人もいるし、教えたこともないしどこで出会ったのかわからないけどよくオフィスに来てくれていた人もいるし。長年大学に勤務しているからか、私のことを一方的に認識してくれている学生も卒業生もたくさんいるみたいで、それはとってもありがたいことです。
AIUでのMy Phases
私のこれまでのAIU教員生活はいくつかのphaseに分かれています。2004年4月にクリプトン(※)で1期生の入学式をやってから長男の産休に入る直前の2007年春学期、つまり4期生までがMy 1st phaseです。その期間は、開学したばかりで決まってないことも多かったし、留学先提携校も少ないし、就活でも「国際教養大学?それどこ?」「AIU?それ何?」で苦労した学生たちもたくさんいたなぁ。大学的にもEAP的にも激動の時期で本当にいろいろあったけど、この時期の学生達にとって私は、ファーストネームで呼んでもらえる「お姉ちゃん的存在」なのかもしれません『Naeko』または『なえこ~』から始まるメッセージをくれるこの時期の卒業生たちのおかげで今でも開学当初の気持ちを忘れずいられる気がします。
※AIUから中央公園方向に坂を登った先にあるホテル。Suda Hallができる前はこちらで様々なイベントを催していました。
2nd phaseは産休が明けた5期生から8期生まで。復帰の年にちょうど2008カリキュラムに変わったばかりで対応にあたふたしていたものの、夫が中学校教員としては異例の一年間の育児休暇を取っていたので、家のことを心配しないで大学の仕事に取り組めたのはありがたかったなぁと。次男のための産休育休からは生後4か月で復帰して、振り返ると、その年の秋学期がこれまで15年以上母業をやってきて一番辛かったかも・・・と思います。授乳中だったからとにかく常に眠いし、それまで教えたことのないクラス担当だったからか授業の準備にも課題の添削にも時間がかかるしで、記憶があまり残ってないくらいには大変だったのかも。
一児の母になって戻ってきたからか、この期間に教えた卒業生からは「母的存在」と思われているような気がします。この頃教えた卒業生の中には今でもよく話をする機会がある人たちも多いし、オンラインで定期的に開催してるオフィスアワーに来てくれる卒業生の多くがこの頃の卒業生。在学中には関りがあまりなかった人たちが、卒業してから「母親として・・・」とか「社会人として・・・」という文脈で相談のようなおしゃべりのような感じで話をしに来てくれるのは、やっぱり「母的」な感じが在学中にあったからなのかな、と。おもしろいもんです。
9期生が新入生の年は丸一年育児休暇をいただいて、10期生入学直前の2013年3月に最後の育児休暇から復帰してからが3rd phaseです。授業中の自然な会話の流れで学生たちに気軽に「How old is your mom?」と尋ねたところ、学生のお母さんがその当時の自分より下の年齢だったということがあり、大きな衝撃を受けた記憶があります。気持ちはずっと開学当時のままなのに順調に年を重ねている事実に気づかされた感覚だったのかも。この時期の学生たちの中には息子たちの子守をしてくれたり、我が家にも頻繁に遊びに来てくれたりした学生たちもいました。息子たちにたくさんいい思い出をくれた卒業生たちに感謝です。
現在進行形なのが4th phaseです。「なんで私?!」としか思わなかったびっくり人事で学生部長になった2019年が始まり。学生部長のお仕事をするようになって見える景色がガラッと変わりました。学生の視点からよりたくさんのことを見たり考えたりするようになったかな。2020年からのコロナ禍で、卒業式が延期・オンライン開催になったり、17期生はオンラインでAIUの学生生活を始めるということになったり、留学中だった学生たちも留学先から強制帰国しなきゃいけなくなったり、留学に行けないまま卒業することになったりした学生もたくさんいました。そんな状況下でも何にでも一生懸命に取り組んでくれる学生たちに一番励まされたのは我々今日教職員だったのかもしれません。
今のphaseがいつまで続くのかまだわからないけど、ここ数年は学内でのウェルビーイングの向上のためにいろいろと挑戦中です。ポジティブ心理学や脳神経科学の勉強を活かして学生や卒業生向けに講座を提供する取り組みをしてきたここ数年。この4月からは『ウェルビーイング・ハウス』というテーマハウスも始めます。同じユニットに住むハウスメンバーがウェルビーイングについて勉強しつつ一緒に活動することで新しい化学反応が起こることが目標。学生一人ひとりのウェルビーイングから始まる大学全体のウェルビーイング。日々変わりゆく世界の中で、大学として変わるべきところと絶対変わっちゃいけない核の部分とのバランスを取りつつ、学生一人一人がベストな学生生活が送れる学習環境・生活環境の提供を目指すためには、学生みんなの、ひいては教職員みんなのウェルビーイングの確保と向上が必要最低条件だと信じて挑戦を続けています。課題山積の中でも、常に自分が成長し続けたい、学生生活や授業の質を高めるために何かしたいという向上心を持ち続けて、まずやれることから一つずつ小さな行動を積み重ねていくことが一番大切という信念と、「きっとよくなる」という希望を持ってこれからの時間を大事に、毎日を過ごしていきたいと思います。
The Central Piece of AIU = Students
これまでを振り返って気づいたこと。それは、大学での自分の仕事の中核をなすべきなのは授業と研究活動のはずながら、自分にとって一番価値があって一番大事にしてきているのは「学生」と「学生とのコミュニケーション」だなぁという結論です。AIUという場所は、良くも悪くも学生は常に何かに追われる仕組みになっていて、入学して一年は全寮制だし、入学時点でのTOEFLでEAPのクラス分けされるし、その後は留学要件のTOEFL550点以上とGPA2.5以上を狙わないといけないし・・・で、常にプレッシャーとの闘い。留学に行けば行ったで、異文化の環境への適応が大変、カルチャーショックやホームシック、自分の英語力の足りなさに絶望したりと、また新たな困難の連続。こんな大変なことばかりある大学生活だから、自分の限界を超えて頑張れたという声もあるし、それが大変すぎる・・・(涙)という声もあるだろうし。
そんな厳しい環境の中で、英語力やアカデミックな能力を伸ばすお手伝いの他に、私が学生に対してできることって何だろう、というのは常に頭の中にあるクエスチョンマーク。今のところの結論は「ただ学生の話を聞いて自分の個人的な意見を共有する」ことが、私ができる一番大事なことかなと思っています。だから学生たちにとって、クラスで教わったことがなくても、いつでも気軽に会いに行ける、そんな教員であり学生部長でいられることを目指してます。”My office door is always open!"っていう感じで。
My Hopes, My Goals
AIU在学中に自分のトリセツ(取扱説明書)を作り始めて、自分のことをより深く理解して、どんな場所でどんな人とどんなことをすればHappyと感じられるのか、自分のゴキゲンを自分で取る方法は何なのかを、たくさんの失敗体験と成功体験を通して見つけてくれたら嬉しいなぁ。それがきっと一人一人のウェルビーイングに繋がるはず。入学して卒業するまで、楽しい瞬間もたくさんあるけど、課題が多すぎて寝れない夜を過ごしたり、人間関係で苦しい想いをしたりもする、喜怒哀楽に溢れまくってるはずのAIUでの学生生活。でも、どんな学生生活だったとしても、卒業するときに
『AIUに来てよかった、AIU生でよかった』
ただその一言がぽろっと出ちゃう卒業生であって欲しい。入試方式がたくさんあるからこそ、個性もばらばら、それまで受けてきた教育もさまざま、第一言語も文化も違う多様な人たちの集まり。いろんな背景や過去を背負ってこの秋田に、AIUにご縁があって集まった学生たちがただただ「来てよかった」と思える大学を作る、その1ピースであり続けたい。ここからもう10年15年くらいは元気にそう言い続けるのがこれからの目標です。
ウェルビーイングが高い大学として有名になってたらいいなぁ、10年後には。
そして歴代の教え子たちが、ある日オフィスに訪ねて来てくれるのを、楽しみに待っています!
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