マスコミ記者からゆるドイツ会社員に

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プロフィール

11期生 
愛知県出身
留学先 イタリア・トリノ大学
新卒で記者職でマスコミ(全国紙)に入社。2023年8月に退社して、現地採用でネットメディアの記者職に転職して、ドイツに住んでいます。
サークルはエスペランザに所属していました。小中高生などの来学者を案内するRCOSの仕事が楽しかったです。

AIUを卒業してから今まで約6年半、記者として働いています。自分で自分のことを書こうとは思ってもいませんでしたが、COLORSの他の記事を読んでるうちに、私も書いてみたい!と思うようになりました。

私は一昨年の夏に、新卒で入ったマスコミを退社して、今はドイツのデュッセルドルフに住んでいます。最近はまつ毛に霜が付くようになり、いちばん分厚いコートを出さなきゃな〜と思うとともに、厳しい寒さのAIUでの冬を思い出します。

マスコミ就職のきっかけは留学

なぜ記者を目指したのか、振り返るときっかけは留学にありました。私がイタリアのトリノ大学に留学したのは2016年。サークル(エスペランザ)の友人や先輩、EAP時代の友達と旅行三昧の日々でした。

当時の4月にイギリスに行った際、世間はBrexit(イギリスのEU離脱)の話題で持ちきりだったのですが、当時の無知な私は全く知らずに、映画や動画に時間を溶かして生きており、イギリスに留学していた先輩から話を聞いて、恥ずかしく情けなくなりました。イタリアに帰って、「卒業後も学び続けられるような仕事に就きたい」と思い調べて辿り着いたのが記者という仕事でした。

卒業後、全国紙の新聞社に入社しました。永田町や霞ヶ関といった「国の中枢」で、人脈をなんとか作ろうとがむしゃらに働き、2〜4年目は静岡に赴任し、企業や金融機関を取材しながら、休みには富士山に登ったりと、コロナ禍ながらも楽しく充実した生活を送っていました。

富士山の頂上での1枚。

しがらみがつらくなってきた

私にとって静岡赴任最後の年の夏に、28人が亡くなった、静岡県熱海市の土石流災害が起こりました。この取材が転機となり、東京に戻る5年目に、災害報道などを担当する部署に異動した私は、被害者や遺族への取材が仕事とはいえ、聞くこと・書くことの両面から、報道の残酷さに正面から向き合うことになりました。

つらいことがあった時、そっとしておいてほしいという人は多いです。でも実際に記者が話しかけると、対応してくださる優しい人も多くいます。文章で記録することに意味があると分かってはいても、涙を流しながら話をしてくださる方をみていると、毎回心が裂ける思いになりました。

職業として記事を書く時、最初の原稿は一人で書くのですが、その後、先輩や次長(デスク)などいろんな人の推敲の上で完成形になります。内容も文章の書き方も、その過程で自分一人では生み出せないほどに磨かれていくのですが、同時にニュアンスや表現が変わるため、様々な葛藤も生まれます。

取材先から「こんな風に書いてほしくはなかった」と実際に言われることもありました。もっとつらいのは、実際に出した記事を読んだ取材先が、悲しそうな顔をしながら「これからもお仕事頑張ってね」とこちらを励ましてくれる時でした。

このころ私は29歳。周りは結婚したり出産したりする友達が増えていました。社内の立場も中堅どころになってきて、産休に入る先輩の仕事を受け持ったり、後輩のお世話をしたりもしていました。今考えると自業自得なのですが、請け負わなくてもいいことを「周りの期待に応えよう!」「自分がやらなければ!」と自ら背負い込み、その半面で「なんで自分だけ仕事ばかりの人生なんだろう」と悲劇のヒロインばりに嘆いていたように思います。

新聞記者になりたくて仕方なかったはずなのに、上司も同期も後輩も大好きなはずなのに、その情熱は打ち砕かれて、その時にはもう、自分も他人も、心も体もめちゃくちゃにして働くのはもう嫌だ!という気持ちが勝っていました。退社することを決めて、有休消化中に逃げるようにドイツに移住しました。

土石流災害から1年後の熱海。
取材で訪れたホテルから伊豆山方面を取った一枚です。

日本で働くことから逃げて思うこと

ドイツに来て1年4ヶ月が経ちました。零細企業に現地採用で転職して、円安とはいえ年収は3分の2くらいになりました。レストランやお店での会話、病院にかかる時や大家さんと話す時など、語学の壁や暮らしにくさも感じます。でも仕事量や人間関係を最小限で暮らしていることで、自分の気持ちも落ち着きました。少ないですがお出かけできる友達もでき、心からのんびりできる今の生活がとても気に入っています。

大企業に勤めてお金を稼ぐことが幸せに見えていたけど、そのレールは自分には合ってなかったと気付きました。ドイツに来てからは、結婚・出産やキャリアも他人と比べることもなくなり、だいぶ楽になりました。ドイツ語学校や旅行、仕事の取材などを通じて、出自も性別も年齢層も様々な人と知り合い、面白いと思うことや勇気づけられることが増えた気がします。

AIU生に私のような人は少ないかもしれませんが、ここまで読んでくださった皆さまに伝えたいのは、まず尊敬の念です。AIUの卒業生には新卒のころに描いた理想を追求している方もたくさんいて、本当に本当に尊敬しています。ただもし頑張れなくなったり、辛くなって逃げたくなったりする時が来たら、幸せの型に自分を縛り付けずに、無理なく生きていける人生もどこかにあります!ということを思い出してもらえたら、本望です。

デュッセルドルフのクリスマスマーケット。
アイススケートができます。
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