今こそ向き合う辺境の学び

学年:10期生
出身地:アメリカ生まれ、広島出身(とはいえたったの3年の滞在、秋田の方が長いです笑)
留学先:アメリカジョージワシントン大学で一度失敗しチェコ共和国のマサリクで再留学

卒業後日本の商船会社で航海士として働き、昨年9月よりスウェーデンのリンシェーピン大学のEthnic and Migration Studies課程に在籍。 在学中は気づいたら料理スキルが向上。

下船前のアムステルダムで記念に一枚
目次

挨拶

みなさん、お久しぶりです。あるいは初めまして。10期の渡辺空太です。今どこで何をしているか謎なものとしての認識が確立していると思いますが、この場をお借りして近況報告と今後の展望についてお話をさせてもらいます。ケツから言うと昨年の9月よりスウェーデンのLinköping大学Ethnic and Migration Studies 民族移民研究課程で大学院生として過ごしています。

大学院の同期とハイキング
大学のあるNorrkopingの一枚

あれ、船乗りは?

はい、船乗りはやめました!自分でも日系企業で5年も続くと思ってなかったのでみなさんにはぜひ褒めて欲しいです笑。初対面の方に説明すると、卒業後なぜか日本の商船会社で航海士として就職をしました。石油タンカー・自動車専用船などに半年以上乗り様々なモノを運び、最終的には5年の間で北南米以外の大陸計23カ国の港を訪れホルムズ海峡・スエズ運河など世界の主要な海路を通りました。一度働いてから大学院へ進みたいとは思っていたのですが、我ながらぶっ飛んだキャリアチョイスでした笑。

アレキサンドリア寄港時の一枚

現在地

現在所属している大学院を説明するとcritical migration studies「批判的移民研究」であり、着手の仕方として脱植民地主義を一つの大きなテーマとして扱っています(他にはintersectionalityなど)。 あまり馴染みのない言葉だと思いますが、脱植民地主義とは植民地時代の力の構造が今なお存在し、構造的に搾取が行われ不平等が生まれ続けている主張です。その中で大きなトピックが資本主義、特に新自由主義的資本主義の批判。なんだか難題かつ非現実的な話が急に出たと思われたかもしれませんが、そんなことはありません。世界銀行やIMFの縮小的財政政策の批判でよく使われ、現在のウクライナやガザでの争い・その歴史的背景を理解するにも必要な考え方です。もっと身近な例で言うと環境のみでなく社会全般のサステナビリティにおいても脱植民地主義は議論を繰り広げられています。

「給料が安すぎて、まともに生活ができない」

このような言葉を聞いたり自ら言ったりしたことはないでしょうか。インフレの影響で生活は苦しくなり、その結果か今年度の春闘で次々と大手企業がベースアップ・新卒月給の大幅底上げが行われましたね。多くのAIU生はこの恩恵を受けたのではないでしょうか?間違いなく嬉しいことですが、今なお給料が上がる見込みがない、そもそもインフレが起きる前から生活がままならない人々が多いということに目をむける方はどれほどいるでしょうか?一部の人間が恩恵を受けるために多くの人が搾取され続けなければならない社会・経済の構造がサステナブルではないことは明白だと思います。この現状に問題提起をしているのも脱植民地主義なのです。

今後の展望

ここまで長々と批判的なことを言ってきましたが、一つ大きな矛盾をここで告白をしなければなりません。結局のところ私自身がヨーロッパの大学院に所属し英語で勉強をするという世の中的に王道とされるキャリアを進んでいることです。各地で存在する移民関連の問題を認知しながら、結局は図書館で文献を読み特に問題解決に向けて動いていない現状。

これは学問に進みたいものとしては永遠の課題なのでしょうか?結局やっていることは意味があるのか、それより企業に勤めた方がよっぽど世のためになるのではないか?

この矛盾の根本的な解決ではないかもしれませんが、進路を考える中で自分なりの答えに辿りつきました。それは、いずれは教える立場に回りたいということです。博士課程に進み研究を行いながら脱植民地主義をベースに大学で教えたい、そして欧米以外の国、特にアジアの大学で教えたい。なぜかというと、脱植民地主義は欧米に位置する「メトロポール」ではなく「辺境」でこそ学ぶ必要があると強く思うからです。

下船時フィリピン人同僚と

最後にBook Rec

最後に一冊のBook Recを。2022年出版のBabel(R.F. Kuang著)。史実×ファンタジーで、19世紀前半のオックスフォード大学の翻訳部門についての物語です。残念ながら日本語訳はされていないのですが、上記で触れた脱植民地主義が大きなテーマとなってます。ネタバレは回避したいので、冒頭に出てくるAntonio de Nebrijaの言葉だけを紹介します。

Que siempre la lengua fue compañera del imperio, y de tal manera lo siguió, que junta mente començaron, crecieron y florecieron, y después junta fue la caida de entrambos.
言語とは何時も帝国の仲間であった、それ故共に生まれ・育ち・繁栄した。そして後に共に没落する。


この小説の軸となる言葉となるのですが、帝国主義批判と同時に作者は言語と言う一つの商品を例に挙げグローバル社会経済への問題提起をしていると思います。AIUではグローバルを掲げ英語での授業を売りにしているからこそ英語そのものが批判はされることがありません(例えば文学関連の授業は英文学しかないのはどうなのか)。しかしこのような議論はグローバルを掲げるAIUでこそ起きるべきであり、辺境であるからこそ起きなければならないと思っています。興味ある方、ぜひ一緒に議論しましょう。

長々と拙い日本語を並べましたが、とりあえずBabelを読んでみてください。現在一時帰国をしてるのでぜひ一杯交わしながら議論しましょう。

そら

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