「幸せな国」スウェーデンで猛烈に生きる

学年:2期生
留学先:フランス
大学卒業後に大手の電機メーカーに就職、その後スタイリスト、広告代理店勤務を経て、2023年の夏にスウェーデンに移住。

2023年の夏にスウェーデンに移住しました。引っ越す前の北欧のイメージは、「シンプルな暮らしで、自然でおいしいものを食べて、家族との時間をゆるりと過ごし、仕事よりも家族を優先する」でした。今もこれは変わりません。

しかし私はというと、そういったものに幸せを感じられないと気付いてしまいました。これまでも、充実感を感じたり幸せを感じる時は、何かを全力でやって燃え尽きた時、同じ課題や目標を友人や同僚、先輩と一緒に達成できた時、ちょっとハードル高いかもと思った階段を上れた時でした。北欧のゆるりとし生活を垣間見ることを期待している方は、ごめんなさい。北欧でも、私はせかせか生きてます。

大学を卒業してからスウェーデンで忙しく過ごすまで、どんなジャーニーだったかと、気づきをお話しできればと思います。

ストックホルムの通勤路から見える風景
目次

どん底があって良かった

大学卒業後に大手の電機メーカーに就職し、宇宙防衛のわくわく感がありそうな分野で海外事業の担当をしました。定期的に海外出張もあり、周りの人も素敵で、知らなかったことに出会える文句のない職場でした。そんな素敵な職場を去って、スタイリストのアシスタントになりました。夢はあるが金がない生活のスタートです。結論から言うと、1年でまた会社員に戻りました。

休日はなく、睡眠は平均1-2時間、忙しい時は移動中に20分間だけ眠る、食事はお洋服のリースに回る間に自転車に乗りながらコンビニの肉まんを食べるという生活を1年程した頃に、貯金が底をついてきました。夢を追う冒険者でありたかったけど、そもそも「夢」だったのかも怪しく思えてきました。

なによりも辛かったのは、人と共有できる時間がないこと。金の余裕がない事。

よく、年上のお姉さま方と飲みに行くと、よく「30歳前にした変な事」という話になります。「今はもう絶対にできないけど、何かに焦りを感じてやってみた20代の経験」と言ったところでしょうか。急に会社を辞めて海外に行った、生活も安定しないような彼氏と結婚した、とか、結構おもしろい話がでてきたりします。ぜひ飲み会のネタに使ってください。私にとっては間違いなくアシスタントをやったことですし、体力的にも精神的にも辛い時間ではあったのですが、嫌な思い出とは思えないから不思議です。今後の自分の人生を考えるときの判断材料をくれた経験でした。

その後、履歴書上では「フリーター」だった私を雇ってくれる会社と出会い、約8年間、広告代理店での生活を駆け抜けました。

さよならプライド

在学中の留学先はフランスでした。同級生が同じタイミングで留学していたスウェーデンに遊びに行ったことが北欧との出会い。固い床を寝床に与えられても、当てにしていた友人は別の国に旅行に行くと放置されても、それでも初めての北欧は、街も人も飾らないのに魅力的で留学先のフランスよりも大好きになってしまったほどでした。

ストックホルム市内の様子

そこから北欧に片思いすること十数年、夫がスウェーデンに住んでいるという、私の能力とは無関係なところから北欧暮らしが決まりました。いそいそ、こそこそと就活に励みましたが、現地の会社では想像以上に相手にされず、かといって現地に行ってから仕事を探す度胸もありません。不安ばかりが募り、切羽詰まり切ったところで、初めて「相談」をしました。人に何かお願いすることが苦手なので、解決策も見えていない相談を持ち掛けて誰かの時間を割くなんて絶対に嫌だと思っていましたが、相当切羽詰まっていたのでしょう、「仕事がない!どうしよう!」と上司や先輩や友人に触れ回りました。おおよそ私が思っていたかっこいい大人の姿ではなかったです。

自分だけの力では絶対に生まれなかった仕事の機会を頂き、フリーランスのマーケターとしてスウェーデンでの生活を始めることができました。移住を決めた当時に思っていた仕事探しの理想とは異なる結果になりましたが、「できないこと」を素直に見せることの大切さと、そこから生まれるきっかけや周りの人の力の大きさを実感できたことは、ギフトとしか言えません。図らずしも苦手を少し克服して出発に向けて背中を押してもらえた経験でした。

顧客へのインタビュー対応

スウェーデンに来てから、移住やフリーランスの生活について相談をもらう機会があります。私も同じ不安や焦りを経験して引っ越したので、まったく先が見えていないような相談でも話を聞くことはとても嬉しいと感じていますし、全力でおせっかいをしたいと思うようにもなりました。

フランス カンヌ広告祭の視察

「幸せの国」スウェーデンの正体は「自分軸」

仕事を持って移住するという、私にとって最高なスタートを切れたスウェーデンでの生活。移住してまだ1年も経っていないのですが、幸福度が高い理由は、それぞれの価値観を大切にする文化が根付いているからではと感じています。いくつか例を挙げてみます。

高校卒業後、大学進学率が日本の半分以下と非常に低いです。学費は税金で賄われるので無料なのですが、進学率が低い理由としては「やりたいことが見えていない」から。大学に入る前に、インターンやボランティアをして自分のやりたいことを見つめる時間を作る人が非常に多く、進学しないといけないという価値観もありません。

男性の育休は義務なので、パパ友同士でベビーカーを押す姿は日常茶飯事に目にします。その間、働きたいママは早く仕事に復帰したり、育休の間に学校に行く人も多く、「ママだから」と理由で何か諦めないといけないことがないように環境が寄り添ってくれているとも感じます。

スウェーデンで良く見るパパが昼間に子供と散歩

そして働き方。ゆとりを持って働くことが強調されがちですが、だからと言って「忙しく働く」ことに批判もありません。フリーランスだから、会社員だから、インターンだから、といった枠組みの区別も薄く、それぞれが選択した自分に合う仕事の枠組みを尊重することが当たり前になっている点は生きやすいと感じます。サークル活動のような、コミュニティからビジネスを生む仕組みが整っているのも、枠組みの曖昧さが後押ししているから。長い会社員生活の中で忘れていた価値観だなと気づきました。Aさんのアイデアと、Bくんの得意、Cさんの強み、Dさんのキャラを組み合わせて一つのプロジェクトを動かす、大学祭の準備のような、それぞれがわくわくできる環境作りを最優先している国だと感じています。

良い国に聞こえると思いますが、自分軸を大切にすることはどこにいてもできることだなと、移住してから特に思います。経歴の通り、安定した仕事もあれば無給のフリーターもあり、過労な時期もあれば海外で働いている今もある。卒業時に計画できていたことは何もないですし、スキルと呼べるものも思いつかないのですが、普通にやってきていた「猛烈に働くことが好き」な点が、強みだったりするのかなと感じ始めています。たとえゆとりの国に住んでいようとも!

プロジェクトチームと私

一緒の時期に大学にいることができた人よりも、会ったこともない卒業生・在学生が多くなっているとは思いますが、休憩したくなったらいつでもスウェーデンにどうぞ。

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