キャリア迷子がアーティストになるまで

AIU第5期生。卒業後、一般企業での経験を経て、自分の本当にやりたいことを見つけるためにデザイン学校に進学。その後、陶芸に出会い、アーティストとしての道を歩み始めました。
グラフィックデザイン、マーケティング、ブランディングなど、多様な分野に挑戦し続けながら、常に「自分に合う道」を探求しています。
現在はパリを拠点にアーティストとして活動しており、ストックホルム、ミラノ、パリ、ロンドンで作品を展示。今年11月には初の東京での展示会を開催予定です。失敗や挫折があったからこそ、アーティストとしての道を見つけたストーリーと、あなたへのメッセージをお届けします。
ウェブサイト:https://www.erimaeda-art.com/
インスタグラム:@erimaeda.art [https://www.instagram.com/erimaeda.art/]

目次

辛かった就職活動

就職活動の時期を振り返ると、まさに「周りがやっているから自分もやらなきゃ」という精神状態。具体的に「これがやりたい」という目標もないまま、流されるようにエントリーしては面接を受ける日々。「軸がない」って何度も言われていました。 AIUの同期と一緒に受けた面接でも、私だけ不採用だったりして、正直毎日泣きたくなるような気持ちでした。 社会に必要とされていないように感じることが多く、周りが次々と内定を決めていく中で、募る焦り。 でも、なんとか最後には内定をもらい、なんとか卒業、就職することができました。

転職はクエストだった

最初に就職した会社は、オフィスワークを主とする、いわゆる一般企業。学びも多かったものの、1年ほど在籍した後、自分が本当にやりたいことではないという思いが日に日に強くなっていきました。そこから「第二新卒」と、新たな環境を求め、転職をしました。
それでも、正直まだ、やりたいことが明確じゃない時期。その時期は本当に辛くて…。だから消去法で「これじゃない」を探していたんです。その一環として興味があったデザイン学校に通い始めました。25歳の時だったので、「(年齢的に)遅いんじゃない?」なんて学校の担当者に言われたりもしましたが、自分の中では「新しいことを始めるのに遅すぎるなんてことはない」と自分に言い聞かせていました。

デザイン学校を卒業してからも、広告業界のアシスタント、ドイツのギャラリーでのマーケティング、東京のマーケティング会社、メーカーのプロジェクトマネージャー、ブランディングの会社と次々に転職しました。今振り返ると、まるで人生がクエストの連続だったように思えます。自分に足りないものを学びながら、未経験への挑戦をしていくたびに少しずつ強くなっていく感じがしていました。レベルアップ!

特にブランディングの会社では、とても温かく迎え入れてもらい、フランスに移住してからもリモートで働かせてもらえるほど家族のような存在になりました。本当にその頃の経験があってこそ、今の私がいるんだと思います。

陶芸をはじめたきっかけ

陶芸との出会いは東京にいた頃でした。土は不思議で、自分の手の中でどんな形にも変わっていく力を持っています。その「変わる力」に私は魅了されました。最初に作ったのは、いろんな女性の体型を表現した花瓶でした。

なぜ女性の体をした花瓶なのかというと、私自身、自分の体にずっとコンプレックスを抱えていたからです。足が太くて、胸が小さい。でも、その時にふと思い出したんです。小学校の教科書に載っていた金子みすゞの詩「私と小鳥と鈴と」の一節、「みんなちがって、みんないい」。なぜ私たちは、体型が違うことで悩んだり、理想に近づこうと必死になったりするんだろう?それって本当はおかしいことなんじゃないかって。

この頃から「Body Diversity(ボディ・ダイバーシティ)」をテーマに仕事と並行して作品を作るようになりました。

自分はフェミニスト?

旦那の祖国であるフランスに移住してからは、また新たな視点で作品を作り始めました。パリに来て感じたのは、今まで日本で感じていた「息苦しさ」から解放されたこと。
すっぴんで出かけることに抵抗があったり、体型や年齢を気にして服を選んでいた日本とは違い、パリでは誰も気にしない。それにちょっと驚きながらも、自由な感覚にほっとした部分がありました。

でも、その代わりに、パリにはパリなりの大変さもあって、「自分のことは自分で守らなければいけない」という厳しさも感じます。周りの空気を読む必要がない分、自分の意見をしっかり言わないと誰も自分の権利は守ってくれない。いつも笑顔で「まあいいか」とやり過ごすことが多かった私が、「嫌なことは嫌」と暗黙ではない、相手に伝えるコミュニケーションをとるようになったのも、パリでの経験が大きいです。

そうやって自分を解放していく中で、ジェンダーやセクシュアリティ、メンタルヘルスといったテーマにも興味が湧いてきました。
最初はなんとなく自分が感じた違和感や疑問を作品に反映させていましたが、パリという土壌で他のアーティストと出会い、話をする中で、少しずつ「アーティスト」という職業を自分の仕事して考えてもいいんだ、と思い始め、気がつけば、私はフェミニストアーティストになっていました。

それからは1960年代から始まったフェミニストアートムーブメントからインスパイアされ、目に見えない社会問題をビジュアル化するようになりました。


アーティストとしての道のり

そうして活動を進めていくうちに、自分のウェブサイトを立ち上げ、販売を始め、ギャラリーでも取り扱ってもらえるようになりました。私は作品制作、写真撮影、カタログ作成、ウェブサイトデザイン、ソーシャルメディア、マーケティング、プロジェクトマネージメント、営業を全て自分でしています。 アーティストとしての活動の幅を広げられているのは、やりたい事を模索している中で身に着けた経験と出会いのおかげだと感じています。

これまでに、ストックホルム、ミラノ、ロンドンで展示をしましたが、一番みている方々に影響力があったなと感じるのはロンドンでの展示。『A REAL WOMAN』というテーマでの展示で、私の『Diversitile』がイギリス中のビルボードに表示されました。 『Diversitile』は、さまざまな胸の形を模ったタイルで、私たちが持っている「美」の規定を打ち破りたいというメッセージを込めたものでした。ギャラリーで展示も素晴らしい機会なのですが、今回はパブリックな場所で作品を展示することで、普段ギャラリーに行かない人にも、メッセージを伝えることができました。

最後に:目的地ではなく、迷うことも楽しむ

もし10年前の私に何かを伝えられるとしたら、「遠回りしてもいいよ」と伝えたいです。何かを見つけるために彷徨うことも、無駄ではない。むしろ、その迷いと、挑戦があったからこそ、アーティストとして生きる道を選んだ、今の私に、運命に巡り合えた、と感じています。
アートでも、ビジネスでも、どの分野においても、自分が何者なのか、そしてどんな貢献ができるのかを常に考えていると思います。その迷いの中で、自分に問いかけたり、目的地を考え直すことがあっても、それは悪いことではないと思います。

迷うということは、成長し、前に進んでいる証拠。 好奇心を持ち続け、諦めずに、進みながら迷うことを私は忘れずにいたい。 最終的に大切なのは、どこから始めたかではなく、どれだけ自分らしく考え、その場所にたどり着けたかだと思います。
もし、今自分の道に迷っている人がいたら、私はこう伝えたいです。「迷路を楽しんで」と。

今年、東京で初の展示会!

私が作品を通じて伝えたいメッセージは、日本で一番発信したいと思っていました。
そして今年、その夢がついに叶いました! ラフォーレ原宿に招待していただき、2024年11月1日から30日まで、展示を行います。東京にいらっしゃる方、または東京にくる予定のある方はぜひみにきてください。 なるべく直接お会いしたいので、来られる方は日時が決まったら、DMかメールいただければ、在廊するようにします。

詳細:インスタグラムからも発信しています。(@erimaeda.art)
「不適切な展示会」
場所:ラフォーレ原宿、愛と狂気のマーケット
東京都渋谷区神宮前1丁目11-6 150-0001
期間:2024年11月1日(金)~ 11月30日(土)
時間:11:00~20:00
オープニングレセプション:2024年11月1日(金) 17:00~
入場無料
ミートアップの予約、取材などは、contact@erimaeda-art.comまでご連絡ください。
では11月に展示会でお会いしましょう!

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