社会人後の海外大学院留学という「人生の賭け」

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プロフィール

3期生。2010年3月卒業後は地方紙に記者として就職し、2013年に英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のメディア・コミュニケーション学部修士課程に進学。修了後もロンドンに残り、欧州の経済情報配信会社で編集部員として約8年勤務。現在は次のステップを模索中。

はじめに

私は昔から、国語の作文に対する苦手意識が強い方でした。それなのに、文字通り「箸にも棒にも掛からなかった」私の就職活動は、不思議な縁で、地方紙の記者職で内定をもらうという結果となりました。きっかけは、私が就活を開始した頃にたまたま取材でAIUを訪れていた新聞記者の方とお話する機会があったことです。逆取材(質問)をさせてもらった時、思いがけず、その面白さに気づきました。興味深い物事について学びながら、書く技能も身に付く。「これだ」と思ったのですが、メディア・出版関係の就活としては開始が遅すぎました。何社も落ち続けて最後にたどり着いた会社で、夜となく昼となく激務をこなしながら数年働きました。

社会人経験後の海外大学院進学ってどうなの?

大学院進学という選択肢は、就職後も頭の片隅にありました。仕事のやりがいはあったのですが、自分の時間は大幅に削られ、ワークライフバランスは皆無に等しい状態。そんな中、2011年2月にニュージーランド・カンタベリー地震、3月に東日本大震災が発生します。関連取材をしながら、「志を持って生きている人たちでさえ、思いがけないタイミングときっかけで命を落とすことがある。現状に流されながら日々を過ごす生き方でいいのか?」と自らに問い直した結果、海外大学院進学という「人生の賭け」に出ることにしました。

社会人経験後の院進学の良い点としては、①動機が定まる・専門性の追求②キャリアチェンジの機会③自ら資金を確保できる、があります。実際にその分野で働くことで、ジャーナリズムやメディア(媒体)ついて学術的な目線から見てみたい、学んでみたいという思いが強まりました。一方で、地方紙では英語を使う機会は皆無で、より海外とのつながりを感じられる環境で仕事をしたいとの思いがありました。そして、本格的に決断したのは社会人3年目の時で、生活費が安い地方在住だったこともあり、ある程度の貯金は手元にありました。

一方で、不利な点を挙げるならば、①英語力の衰退②仕事をしながら準備する大変さ、があります。私の進学先は出願書類の提出だけでよかったのですが、そのためのIELTSスコア取得や志願動機のエッセイ作成に用いる英語能力を取りもどす必要がありました。新聞記者をしながら院進学の準備を進めるのは不可能だったので(いつ何時でも携帯電話が鳴れば出なければならず、それでは英語の試験は受けられない等、様々な理由があります)、1年ほど別の会社でお世話になったものの、それでもフルタイム勤務なので準備に費やす時間と労力を確保しなければなりませんでした。

英国の修士課程は通常、必須・選択授業を1年間履修した後に2カ月ほどで修士論文を作成・提出します。冬休みも春休みも夏休みも課題執筆に追われるので、在学中にインターンシップをしたい、院に通いながらNGO活動やボランティアに従事したいといった人には、あまりおすすめできません。私の進学したプログラムは、関連分野での経験は必須ではありませんでした。しかし、セミナーで発言をしたりエッセイを書いたりする際にはやはり関連した経験やそこから生まれる見方・考え方がベースとなるため、それらを持つ人は有利だったように思います。社会人経験後の大学院進学における最大の利点は、経験を学びに紐づけられるところでしょう。世界中から集まった同期は社会人経験者が多く、人種・文化背景も様々で既婚者も何人かいました。結婚してからも修士に挑戦する女性たちを見て、励まされたところがあります。幸いなことにクラスメイトはみんな友好的で、グループを組んで勉強会をしたり、講演会や学外の関連イベントに出席したりすることでより知識が深まりました。

LSEの卒業式にて(セルフィー集団の右端、2014年12月撮影)

現地での就職活動の困難さ

院在学中は常に、できる限りキャリアイベントに参加しました。興味ある雑誌の発行元などに履歴書を送ったこともありましたが音沙汰はなし。英国では日本人が仕事に就く場合は基本的に就労ビザが必要となるため(配偶者ビザがある場合など除き)、ビザ取得のスポンサーになってくれる企業(大体は資金のある経済・金融・コンサル系)以外への道は厳しいのが現状です。新卒・準新卒向けの日本企業のキャリアフォーラムや合同説明会などは英国でもありました。その半面、社会人経験のある修士課程の日本人は、日本の会社を休職している場合、国家公務員が制度を利用して来ている場合、国際機関や国際NGOなどの選考を目指す場合などが主でした。

学生ビザ→就労ビザ→永住権取得まで

私の場合は、共同通信グループの株式会社NNAの英国提携先で、欧州版の経済ビジネス情報を配信する会社が就労ビザを出すことが可能だったので、編集部員として就職。そこで、学生ビザから就労ビザへの切り替えをしました。この会社では、前職で培った記事執筆・校正能力と、大学院で鍛えた英文読解力を生かし、ウェブサイトやPDF版紙面に掲載する記事を作成。欧州各国の政治・経済や時事問題、欧州の大手企業や様々な業界の動向といった知識は業務を通じて養い、時事ネタでロンドン在住の英国人や欧州諸国出身者たちと盛り上がれるほどになりました。 英国では就労ビザで5年以上滞在すると、永住権申請が可能になります。その手続きをパンデミック中の2020年に完了し、永住権を取得しました。これまではビザスポンサーのライセンスを保有している会社の下で、指定の職種カテゴリーの範囲内で、他の英国・EU市民にはできない(もしくはこれらの求職者の中により適任な人がいない)仕事内容・技能レベルで、ある一定の年収がある仕事にしか就けなかったのですが、今ではボランティア活動に専念することや完全なフリーランスになることも含め、職業選択の自由と幅が広がりました。

高低差が激しいコースで、トレイルマラソンに初挑戦(2021年6月撮影)

今どんなことを感じているか?

「ロンドンの寿司屋でパートとして働いて、美味しいまかないが食べたい」という邪念もあったのですが、今後はこれまでの社会人経験や編集記者経験で得た知識や技能を生かしながら、自分の可能性を広げたいと考えています。「人生の賭け」に出てから約10年。まさに世界が凝縮されているような国際都市ロンドンで多様な人々に出会い、ブレグジットをはじめとする英国・欧州の歴史的な出来事をリアルタイムで目にし、欧州諸国やEUの先進的な政策や取り組みについて知識を深める機会に恵まれたことで、世界観は大きく変わりました。一方で、ここ数年間はある種の安定の中に身を置いていた自分に気づきました。今は、書く仕事や「伝えること」が好きな自分と向き合いながら、次の大きな変化に向けた準備期間といったところです。

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