「これまで」が「これから」につながる時

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プロフィール

高橋正明(学部4期GB・専門職大学院ELT10期)
香川県観音寺市出身
留学先:NHH ノルウェー経済経営大学 (ノルウェー王国 ベルゲン)

2012年3月学部卒業、アパレル小売業界で店長職を歴任し、数年勤めた後にオーストラリアへ。その後AIUの専門職大学院に入学し、在学中に学習塾を立ち上げ今に至る。

国際教養大学の大学生活で挑戦したこと、卒業してからやってきたこと、その全てが今の自分の生き方につながっているのを感じます。良い人生にしたい、良い人生にしてほしい、そんな想いで書きました。読者の皆さんに少しでも役立つことがあれば幸いです。

今やっていること

塾長デスクからの眺め。自習に特化した作りになっています

 地元の方との縁に支えられ、秋田県秋田市で個人塾を経営しています。

 塾では「自習を主体とした、自走型学習塾」というコンセプトで、普段は授業を全く行わずに塾生たちの自習サポートをしています。勉強の本質を身につけ、将来にも役立つ課題解決の力を身につけてもらいたいという思いからです。塾生はそれぞれの志望校を目指し、質問や相談が気軽にできる環境で、ほぼ毎日勉強できる仕組みです。創業3年目ですが、毎年県内の高校へ順調に合格者も出ており、昨年は塾としては初めて2名の塾生が国際教養大学に合格しました。

説明書を見ながら一生懸命にロボットを組み立てる小学校1年生

 また、塾と同様に、自ら考え手を動かして学ぶことを大切に、ロボット教室を始めとした年長さんから通える習い事の機会も提供しています。

 これは、自分自身の受験経験や国際教養大学での学生生活、社会人としての経験も踏まえて、「自分で考え、自分の責任で実行する」そして「目標に向かって、達成するまで努力する」ということが非常に大切な力だと心から実感したからです。同窓生や、先輩後輩の皆さんもきっとそういう力があって、学生生活を充実させ、社会人として活躍されているのだと思います。

 私自身、これまでの人生を振り返ってみても、国際教養大学に通って経験したすべてのことが、今の人生の選択に影響を与えていて、またしっかりと繋がっていることを実感します。塾生たちの自己実現をサポートするこの事業こそが、私自身の自己実現の場になっていると思います。

 地元から遠く離れた秋田の地で事業を立ち上げて生活しているのは、私自身が国際教養大学出身であり、そこでの学びが現在の仕事に強く活かされているからです。そして、竿燈まつりを始めとする伝統ある文化をきっかけに地域のコミュニティーの中に温かく迎え入れて頂いていることが何よりもありがたく、自分がいるべき場所に居させてもらっているのを感じます。

これまでの経緯

 学部時代には、竿燈会やゴスペル、軟式野球部など、様々なグループに所属し活動していました。広め隊や、学祭の実行委員会、秋田の魅力を再発見する団体での活動など、幅広く色々なことに挑戦していたなと思います。そしてそのどれにも一生懸命でした。

もしタイムマシンがあって、もう一度選択し直せるとしても、その時と同じ選択をする

そのくらい真剣に、自分に正直に選んできたと思います。

 就職のきっかけは東日本大震災でした。当時私はノルウェーに留学しており、当事者にならなかったことが逆に自らを動かしました。留学先から就職活動を開始し、夏休みに短期集中で就職を決めました。選んだのは、リーダーシップを発揮し、外国で働けるチャンスのある日本の企業でした。

 そうやって決めた会社でしたが、結局は病院にかかるほど心身ともに不調となり、休職したのちに退職しました。そのときに、自分の人生がリセットされたような状態になりました。もう一度、やりたいことだけで人生を満たしたいと思いました。

お遍路の道中、香川と徳島の県境で。靴がボロボロになるまで歩きました

 退職後は、四国八十八箇所巡礼(通称 お遍路)の旅に出ました。弘法大師(空海)が開いた88箇所のお寺を歩いて回るという旅です。全行程1200Km、40日ほどかかる長旅です。香川県出身で、幼いころから白装束姿の旅人(お遍路さん)を目にしており、いつか自分もやってみたいと思っていました。自分探しや、先祖の供養など様々な目的の人がいますが、自然と「今これをやるべきだ」と感じたのです。

 道中は幹線道路もあれば、山道、あぜ道、階段など様々です。毎日どこまで進むかだいたい決めて、そこに向かってただただ歩きます。そんな日々を過ごす中で、目的地に向かって確実に1歩1歩進んでいけば必ず到着するという単純な事実に気が付きました。なんだ、そういった生き方で良いんだ、と思ったのです。

 また、道すがらアメリカ人のお遍路さんに出会いました。アメリカ陸軍の出身で、仏教徒である父親の代わりにここまで来たのだと言っていました。彼とは数日共にしましたが、宿にお世話になった際、日本語が話せない彼の通訳をしました。その時、宿の方からも彼からもとても感謝されました。宿の方は、海外から来たお遍路さんに、四国八十八ヶ所の歴史や文化を伝えることができて喜んでくれましたし、アメリカ人の彼にとっては何も分からずに歩くだけの修行よりも、その旅の意義を見出せたと嬉しそうに伝えてくれました。社会からドロップアウトした自分でしたが、こんな風に人の役に立てるということを思い出した瞬間でした。

 そんな経験から、自己実現ができるような人が増えてほしい、そして自分は教えるのが好きで得意かもしれない、将来自分の塾を開きたいと思うようになりました。そう決めてからは、そのためだけに時間を使っていたと思います。かつての先生に、自分で塾を開くなら修士号取得をと勧められ、海外大学院での修士号取得も視野に、オーストラリアにワーキングホリデーに向かいました。大学院は費用面で断念しましたが、クイーンズランド州立大学のTESOL集中講座を受講し、残りの時間はダイビングのツアーボートに泊まり込みで働きながら、世界中からやってくる観光客の皆さんと一緒に潜ってグレートバリアリーフの案内などをしていました。

グレートバリアリーフの海で。ダイブガイドとしてウミガメの位置へ先導しているとき

 これも、ダイビングのライセンスを取りたいという思いから現地の縁で仕事に繋がり、最終的にプロとして働けるダイブマスターの資格まで取得するに至りました。自然相手ですから命の危険もあります。お客さんにブリーフィングをしたり、道具の使い方をデモンストレートしたりして、一緒に働く仲間と仕事の分担をするなど、英語で生活しながら本格的な仕事を経験できました。

 陽気なオーストラリアの雰囲気や、他を尊重しつつ自分の人生を大切にしながら働く価値観にとても刺激を受けました。これは、後述する今の自分の働き方にも通ずるものがあります。

 その後、恩師である市川教授や、懸教授のご支援もあり、国際教養大学の専門職大学院に入学することにしました。最終的に、慣れ親しんだ秋田に戻ってくることになりました。でも実は、大学院在学中にも体調を崩すことがあり、こんな状態の自分にはやっぱり難しいのかなと思ったこともあります。自分はこれを望んで今まで進んできたはずなのに、どうにも気持ちが前を向かない日々を過ごし、このまま大学院に通うことの意味も持てなくなっていました。

 そんな中で、人と人の繋がりから地元の不動産の方に住居兼塾として使えそうな好立地の物件を紹介していただきました。やるなら今だと思い立ち、お金は十分にはありませんでしたが生活費さえ何とかなればと思いスタートしました。実際に事業を始めたことで、日々頑張る塾生たちからむしろ刺激を受け、向上心が高まり、大学院を修了することが出来ました。今は妻となった当時の彼女が、何も言わず応援してくれたこともすごく支えになりました。

 たとえどんなに好きなことでも、自分で決めたことだとしても、うまくいかないことがあると思います。そんなときはお遍路で感じた、1歩ずつでいいから正しい方向に歩み続けること、つまり動き出すことでしか状況を変えられないのだと思います。動き出せば周りも助けてくれます。周りに感謝して、そしてまた進めるのです。

これから目指すところ

拡大移転した新教室 移転初日の夜

 塾はまだ3年目ですが、おかげさまで多くの生徒に通っていただいています。少し大きな建物に移転もしました。今まさに「これまで」が「これから」につながる接続点にいるのだと思います。この場所では、自分の「これから」を作っていますし、何よりも未来を担う秋田の子どもたちの「これから」も生み出しています。

 実績も伴って少しだけ発信力も付いてきました。新聞やラジオに取り上げていただくこともありました。そしてこの夏には、本が出版されます。

全国の塾長たちと共同で書かせていただいた初の書籍。
詳細はこちら https://amzn.to/3zl8b1D

 普段はほとんど1人でやっている塾ですが、全国の個人塾の塾長さんたちとつながることで色々な取り組みや成果を共有していただき、運営の参考にしています。そんなつながりも、「こんな変わった経歴の持ち主が秋田で塾をやっている」というところから生まれました。

 これからもずっと変わらないのは、勉強や習い事を通して、自分から行動して自己実現をすることや、物事をやりきる粘り強さを身につけてほしいということです。私は、塾生たちがこうしたい、と思ったことに全力で挑戦できる環境とサポートを一生懸命やる、ということかなと思います。今は、塾長として塾の運営や子どもたちの習い事に本気、そして自分の人生に本気です。

 ただこれまでのような、常に100%で完全燃焼するような働き方ではなく、正しいプロセスを信じて淡々とやり続けることを心がけ、長く続けていけるような働き方に変わりました。やはり、お遍路やオーストラリアでの経験が活きていると思います。塾業界はなかなか休みをとるタイミングが難しいですが、休みの日はきちんと設定して妻と出かけたり、ゆっくりすごしたりする時間を大切にしています。次は、長く健康で暮らし続けるためにも、早急に運動不足を解消しなければいけないなと思っています。

 最後になりますが、卒業生の皆さんが母校を訪れる際には、ついでで構いませんので是非ご連絡ください!皆さん一人ひとりの歩んできた1歩を塾生や保護者の方々にも共有してほしいと思っています。

 自分の選んできたことは自分の誇りです。そしてそれは紛れもなく自分自身を作っている一つ一つの小さな歴史です。私自身やりたいことは何でもやってきたし、新しいことにもどんどん挑戦してきました。これまでの経験や、今の姿を通して塾生や、今この記事を読んでくださっている皆さんにも、背中を押せる何かが伝わればいいなと思います。

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

【個人情報・文責】
高橋 正明
明正塾 MEISHO Lab. 塾長
所在地:秋田県秋田市保戸野原ノ町7−40
https://meisholab2019.wixsite.com/home

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