本が私に与えてくれたもの

学年:15期生
出身:徳島県
留学先:アメリカ ウィリアム&メアリー大学

在学時の所属:SRT、軟式野球部、CIS
卒業後から現在までの経歴:2022年4月卒。都内で社会人一年目。

目次

本屋の店頭で思うこと

書店に立ち寄った際、店頭にならんでいる本を眺めるのが一種の習慣となっている。なぜなら、そこは世間の関心が一か所に凝縮された社会の縮図となっているからだ。

特に、最近では、ウクライナで戦争が起ったことに関連して、ウクライナ又はロシアに関する書籍が全面的に売りに出されているが、それと引けを取らないぐらいに売れ筋の本として店頭で販売されているのがいわゆるハウツー本というものだ。

「分かりやすい○○」や「60分で身につく○○」といったタイトルのハウツー本が店頭にひしめく昨今の書店事情から、読書をすることで何かを得なければならず、且つそれを楽をして得たいと認識している、真面目か怠惰なのかよく分からない社会がそこには浮かび上がる。そのため私は、堅苦しくも空虚な雰囲気が漂う本屋の店頭を不思議に感じながら眺めるのが常である。

だが、私にとっての読書は、元来目的があるものでもなければ、分単位で刻める作業のような行為でもない。私にとっての読書とは、上記のようなどんよりとした世界から逃避行する脱出装置のような役割を果たしている。自分が好きな、面白いと思う本を読んでいると気づかないうちに時間が過ぎ、本を手に取った直前に抱えていたもやもやや悩みが消えていると感じるときもある。

本が並ぶ作業机

私にとっての読書と原体験

なぜ本がある種のリラックス効果を私に与えるかといえば、それは私の原体験として本が「安心」と密接に繋がっているからである。作家である母の影響から私は本に囲まれて育ってきた。また、まだ物心が付く前から絵本の読み聞かせを就寝前に母にしてもらっていたと記憶する。自分が最も落ち着く実家という「空間」と寝る前という「時間」において本と関わってきた経験は、読書が「安心」そのものであるという考えを私に植え付けるに至った。

そんな背景が理由か、私にとっての読書は気持ちを落ち着かせたい時に行われるものであり、それは社会人となった今でも日常のあちらこちらに入り込む。流石に、平日の朝はバタバタしていてゆっくり本は読めない。が、通勤中にオーディブックで本の内容を聞いたり、電子書籍を職場に持ち運び昼休みの時間を使って読書をするなどして、平日でもスマートに読書の時間を作っている。

休日になると、丸一日を本に費やす時もある。友人らと出かける用事がないときは、平日には時間が確保できなかったり、疲れてしまい読みきれていなかった、積読本を読む時間に充てる。自宅で読むこともあれば、気晴らしにスターバックスなどゆったり出来る場所に赴いて環境を変えるときもある。

気晴らしに屋外で本を読むことも

読書の懐の深さー正しい読書は存在しない

私にとって読書とは最近の書店の店頭が暗示するような使命感のあるものではない。それとは真逆のマイペースなものであり、目的もなくひたすら没頭するものである。だが、私の持論は決して使命感としての読書を否定するものではない。私だって使命感から本を読んだことはこれまで数えきれないくらいある。授業の課題として課された教科書、資格取得のための参考本、英語試験のためのテキストなど数多くある。

むしろ、私は使命感としての読書を肯定したい。

現代は多様性が謳われて、確固たる自身の「個性」を確立することが求められ、メインストリームに安住することに居心地の悪さを感じる社会にもなってきている気がする。だが、マジョリティ、マイノリティ問わずにみんなが気持ちよく毎日を過ごせる社会が望ましいはずである。

寛ぎながら本を読む様子

読書の素晴らしさは社会を構成する全ての人々を内包する懐の深さである。見方を変えれば、本は手に取った人の望みに応じてどんなものにも変化を遂げる。そして、本が手に届く場所にある限りはその変化は時間を選ばない。

私にとっての読書は落ち着くためにあるものだが、別の人にとっては全く違う意味を帯びるものかもしれないし、その方がその人の人生をより豊かにするものなのかもしれない。

今この記事を読んでいるあなたにとって、読書とはどんなものだろうか。ここまで書いた通り、読書は読者次第でカメレオンのように変化する万能な存在であると私は思う。私の読書体験を通して、皆さんがより自由に自分らしく読書を楽しめるきっかけになったら嬉しい。

ジョセフ・P・ケネディの「The Ambassador」


ちなみに現在は、「The Ambassador(未訳:大使)」と題する、ジョン・F・ケネディ米国大統領の父にあたるジョセフ・P・ケネディの英国大使時代の評伝を読んでいる。著者はナチス・ドイツに対し宥和的であり、本国政府の意向を無視して行動するジョセフ・ケネディに終始批判的である。が、著書は同時に、ジョセフ・ケネディを通して、当時の米英両政府の対ドイツ政策の実態についても検証しており、単なる人物紹介に留まらない、重厚的な歴史を綴っている。

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